2009
12/1

渡辺博弁護士に対する懲戒請求

2009年2月15日 ( 日 )当会の設立総会において会員である田中幸子さん(仮名)からある報告がなされた。それは、「ある弁護士に対する懲戒請求書を提出した」という驚くべき内容であった。

懲戒請求人 田中幸子さん(仮名)の訴え」によると、2007年の秋、田中幸子さん(仮名)は幸子さんの両親宛てにある謎めいた手紙が送られてきたことを母親から聞かされる。その内容を知って、幸子さんは「恐ろしさと気持ち悪さ」を感じたという。
送り主は、霊感商法被害者対策弁護士連絡会の事務局長を務める渡辺博弁護士であった。

手紙の中味は、「渡辺博弁護士から田中さんの両親に密に送られた手紙」を見て頂きたいが言わんとするポイントは、以下の内容である。
『幸子さんは、統一協会に誘い込まれている。このまま行くと合同結婚式に参加させられ、韓国の辺鄙な農村の嫁の来てのない男性と結婚させられ悲惨なことになることもあり得る。このままでは、幸子さんは一生、自らの力では統一協会から脱出することは不可能である。この問題に詳しい日本基督教団の牧師か当職に相談し、幸子さんの救出を検討することが必要である。至急、幸子さんに気づかれることなく、当職宛にご連絡いただきたい。』
渡辺博弁護士は、手紙の中で、『繰り返しますが、この手紙のこと、統一協会のこと等を、幸子さんに話すことは絶対にやめてください。』と手紙のことを幸子さんに秘密にするよう念を押した上で『ご両親において、早急に統一協会の実態を認識され、幸子さんを早期に救出していただきたいと思います。』と締めくくっている。

幸子さんは、今まで多くの統一教会の信者が牧師等の指導を受けた親族によって拉致監禁され、強制説得の被害に遭っていることを知っていた。また、その牧師等と反対派弁護士との間には、<牧師等による統一教会信者に対する脱会説得⇒牧師等が脱会させた元信者に弁護士を紹介⇒弁護士が元信者の代理人となって統一教会を提訴>という連携関係があることも聞いていた。

本来、人権侵害を防止する使命があるはずの弁護士が、虚偽情報を含む手紙を何も知らない両親に送りつけ、畏怖困惑させ、本人の意思に反する脱会工作をけしかけ、しかもその結果を自身の顧客作りに結びつけようとしている・・・。このように判断した幸子さんは、自分の意思もプライバシーも人権も土足で踏みにじられたような、言いようのない恐怖と怒りが湧き上がる中、渡辺博弁護士を対象に、第二東京弁護士会に懲戒請求書を提出することを決意した。→「懲戒請求書・全文

弁護士に対する懲戒請求とは、ある弁護士に品位を失うべき非行等があったとき、懲戒を受ける制度で、以下の「弁護士法」を根拠とする。また、懲戒は、その弁護士等の所属弁護士会が、懲戒委員会の議決に基づいて行う。

(懲戒事由及び懲戒権者)
第五十六条 弁護士及び弁護士法人は、この法律又は所属弁護士会若しくは日本弁護士連合会の会則に違反し、所属弁護士会の秩序又は信用を害し、その他職務の内外を問わずその品位を失うべき非行があつたときは、懲戒を受ける。
2 懲戒は、その弁護士又は弁護士法人の所属弁護士会が、これを行う。

(懲戒の種類)
第五十七条 弁護士に対する懲戒は、次の四種とする。
一 戒告
二 二年以内の業務の停止
三 退会命令
四 除名

本文を見るには、以下の緑色の文字をクリックしてください。本文が開きます。

「懲戒請求人 田中幸子さん(仮名)の訴え」

1.懲戒請求人 田中幸子さん(仮名)の訴え

この文章は2月15日の拉致監禁をなくす会創設大会の際に発表したスピーチを要約したものです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私は、田中幸子と申します。統一教会の信仰を持ってそろそろ8年目を迎える者です。

今回、渡辺博弁護士を対象に、第二東京弁護士会に懲戒請求を提出いたしました。

「渡辺博弁護士」も「懲戒請求」も一年前までは存在すら知らなかった私ですが、このような事になったいきさつをご説明したいと思います。

昨年(2007年)の秋に、私の両親のもとへ、渡辺博弁護士から手紙が来ました。

その手紙の内容はというと、まず「あなた方のお嬢さんが(つまり私、田中のことですが)統一教会に誘い込まれ熱心に活動をしている」ということ。そして「お嬢さんを救い出すために、お嬢さんには内緒で、当職(つまりは渡辺弁護士)のもとへ連絡をし、両親の手で救い出さなくてはならない」と言った内容のものでした。

絶対に内緒にするようにと書いてあった手紙でしたが、この手紙が来たことを私が知ることができたのは、両親がその部分をしっかりと読まずに、本当なのか確認をするため私に連絡をしてきてくれたためでした。

私は長年両親や友人には信仰を持っていることをあかさずに過ごしてきました。それは拉致監禁という問題があることを身近な信仰の先輩を通して沢山聞いていたためでした。3度も拉致監禁されたことがある小林宗一郎さんもその一人です。

両親に嘘をついているのは嫌でしたが、自分も統一教会の信仰を持っていることが知られたら、拉致されてしまうかもしれないという思いから、とても言い出すことが出来ずにいました。

送られてきた手紙の内容は両親に対して大きな不安を呼び起こすものだったので、両親は大変驚いたようです。

まずは手紙を呼んでみてください。

渡辺弁護士からの手紙の内容はこちらです。

読んでいただけたでしょうか?

手紙の中には誇張され歪曲されて、事実でないことまで書かれていました。そして、私には絶対に秘密にするようにと繰り返し強調され、「救出を検討」するようにとも書かれていました。

手紙を最初に開けたのは父でした。父は一読して母に渡し、私本人に確認するようにと言ってくれました。母はよく読まないうちに私に連絡をしたらしく、後で妹が言ってはいけないと書いてあることに気付いたようです。

私は話を聴いた瞬間、恐ろしさと気持ち悪さを感じました。

渡辺弁護士の中では私を救うという題目を掲げながら、私の意志というものが尊重されていないように感じられました。

なぜなら両親に手紙を送る前に私に忠告をしてもいいはずだからです。その上で私自身がどうすべきかを考えさせるというのが筋というものです。

それにも関わらず、私に一切知らせずに、渡辺弁護士が信じている一つのある見解の中で、私自身の意志を、勝手に、親を使って操作しようとしています。そのやり方が、私を救うどころか、逆に踏みにじられているように感じました。

そして送ってきた住所がなぜ分かったのかという疑問が残りました。私は文面からこの情報を弁護士に伝え、知っているのは一人の女性しかいないということを確信しています。しかし私はこの女性に実家の住所など教えたことはないのです。どうやって調べたのか。とても不安になりました。

そして弁護士だからと言ってこのようなことをしてよいのだろうかとも思いました。

もしこれで親が私に言わずに弁護士に相談していたらどうなっていたでしょうか?

想像すると怖くなります。しかし今現在、親には正直に信仰を持っていることを話し、認めてもらっています。親が統一教会の様々な噂されている内容を知りながらも、私を信じてくれ、私の意志を尊重してくれ、寛大であってくれたことを感謝しています。

私以外の教会員にもこのような手紙を送っているようです。さらには実際に行方不明になった方拉致監禁された方(突然失踪し、脱会した方)がいるということも最近知りました。

渡辺弁護士は即刻、このような行為をやめるべきだと思います。

今後このような被害者の方が増えることがないようにと願って、今回、ルポライターの米本さんなどにご協力いただきながら懲戒請求という形をとらせていただきました。

実際に第二東京弁護士会に送った内容を一部載せましたので、ご一読ください。

懲戒請求書

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「渡辺博弁護士から田中さんの両親に密に送られた手紙」

田中幸子様ご両親様

2008年(平成20)年11月14日

田村町総合法律事務所

弁護士 渡辺 博

謹啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

謹啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

突然のお手紙で失礼致します。当職は、第二東京弁護士会(03-3581-2255)所属の弁護士です(登録番号21736)。

今回、田中様のお嬢様である田中幸子さんの件でご連絡を申し上げます。

最近、宗教法人統一神霊協会(統一協会)というカルト宗教団体を脱会することができた若い女性から、幸子さんが、統一協会に誘い込まれていることの知らせがあり、このお手紙を差し上げることとしました。

当職は、これまで19年にわたり、統一協会による霊感商法の被害者救済に携わっており、現在、そのための東京の弁護士の集まりである霊感商法被害者救済弁護士連絡会の事務局長を務めています。

『霊感商法の実態』というホームページも立ち上げ、ここでの無料相談のも応じています。

統一協会は、韓国人文鮮明を教祖とする宗教団体で、宗教団体であることさえも隠して、学生や市民に対し、「とても運勢の良くわかる先生がいて、是非占ってもらったらいいですね。」とか、「今あなたは人生の大事な転換期にあります。人生について学ぶとても良いところがあります。ここで学べば運勢が良い方向に向いてきます。」などと騙し、ビデオセンターに連れ込み、正体を隠したまま、統一協会の教義の教え込みを図っています。

学生や市民に対して、教え込みが済んだ後、初めて統一協会であること、教祖が文鮮明であることを明かして入信させ、今度は、他の学生や市民に対し、正体を隠して誘い込むことを命じます。

こうして統一協会に誘い込まれ、献金と称して、一人で100億円以上もの全財産を奪われた高齢者も日本全国で数多くいます。

幸子さんも、こうして、統一協会による正体を隠した誘い込みにあい、現在は、熱心な統一協会信者として、正体を隠して伝道活動を行っているのです。

統一協会に入信させられた女性信者は、恋愛を絶対的に禁止され、伝道での実績を積んだ後、教祖文鮮明の指名された男性信者と合同結婚式に出ることを許され、その後再び許可を得て家庭を持つことが許されます。

現在、統一協会は、多数の日本女性信者を韓国に送り込み、韓国の辺鄙な農村に住んで結婚の機会に恵まれなかった高齢の男性や、身体障害者、知的障害者、末期の癌患者、失業している破産者などの結婚の可能性のない韓国人男性と結婚させています。

こうして韓国の辺鄙な農村等に送り込まれた日本人女性信者は、すでに6000人にのぼり、そのほとんどで婚姻生活が破綻し、韓国人男性の暴力を受けたりなどする中、悲惨な生活を送っています。

また、合同結婚式に選ばれた相手と結婚すると、2人の間に産まれた子供は産まれたときから統一協会の教義を教え込まれ、文鮮明を教祖と信じることなり、この問題は1代だけでなく、2代、3代と続いていく極めて深刻な問題です。

このまま、幸子さんが統一協会に所属したままでは、一生、自らの力では統一協会から脱出することは不可能です。

今、幸子さんのご両親が統一協会というカルト宗教の実態を理解し、この問題に詳しい日本基督教団の牧師、あるいは当職に相談し、田中さんの救出を検討することが必要です。

なお、当職からこのような手紙が送られてきたこと、ご両親において幸子さんが統一協会の取り込まれたことを気付いたことを、絶対に幸子さんには知らせないようにしてください。

ご両親から、幸子さんに対し、この問題について問い詰めたりすることは絶対にやめてください。

そのような行動を取れば、幸子さんをますます統一協会の活動にのめり込ませることになり、また統一協会から救出することが非常に難しくなります。

至急、幸子さんに気づかれることなく、当職宛にご連絡いただきたいと思います。

繰り返しますが、この手紙のこと、統一協会のこと等を、幸子さんに話すことは絶対にやめてください。

ご両親において、早急に統一協会の実態を認識され、幸子さんを早期に救出していただきたいと思います。

敬白

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「懲戒請求書・全文」

懲戒請求書

第二東京弁護士会 御中

懲戒請求者

氏名 田中幸子

住所 〒 -------

連絡先  -------

対象弁護士氏名 : 渡辺 博 登録番号 21736

対象弁護士の所属事務所及び事務所の所在地 : 田村町総合法律事務所

〒105-0003 東京都港区西新橋3丁目2番1号共同ビル(西新橋)6階601号

1.申立の趣旨

貴弁護士会所属の渡辺博弁護士(登録番号21736)を懲戒することを求める。

2.懲戒事由の説明

1.渡辺弁護士からの手紙の送付

平成20年(2008年)11月15日、私の父宛に第二東京弁護士会の渡辺博弁護士(登録番号21736)から封書が突然送られてきました。同封されていたのは「田中幸子様ご両親様」と題する手紙で、この手紙(以下、「本件手紙」と言う)は、私が信者として所属する宗教法人世界基督教統一神霊協会(以下、「統一教会」と言う)を一方的にカルト教団と決めつけた上、私が統一教会の信仰を持っていることを私に無断で両親に知らせ、統一教会に関する誤った情報を両親に伝え、私を統一教会から脱会させるために日本基督教団の牧師か同弁護士に相談することが必要であると説いて「救出」と称する脱会工作を唆し、私に知られないように同弁護士に連絡するようにと持ちかけるものでした(甲1号証の1、2)。

日本基督教団は統一教会の壊滅を目指している宗教団体で(甲6号証)、この教団に属する少なからぬ牧師達が、統一教会信者に対する拉致監禁を手段とした脱会工作に関与してきました。これは、牧師等の指導を受けた親族が、統一教会信者を自宅以外のマンションの一室等に拉致監禁し、監禁現場に牧師等が赴いて脱会説得を行い、信者が脱会するまで監禁から解放しないという手法です(甲3号証、甲4号証、甲5号証)。

渡辺博弁護士は霊感商法被害者対策弁護士連絡会(全国霊感商法対策弁護士連絡会という場合もある)の事務局長を務めてきた弁護士ですが、渡辺弁護士を含む同連絡会の弁護士等は、牧師等による脱会説得によって脱会した元統一教会信者が統一教会を相手に民事裁判を提起する複数の事件で、元信者の代理人を務めてきました。

即ち、牧師等と弁護士との間には、<牧師等による統一教会信者に対する脱会説得⇒牧師等が脱会させた元信者に弁護士を紹介⇒弁護士が元信者の代理人となって統一教会を提訴>という連携関係があります。

2.渡辺弁護士が本件手紙で両親に勧める「救出」について

渡辺弁護士は、「当職からこのような手紙が送られてきたこと、ご両親において幸子さんが統一協会の取り込まれたことを気付いたことを、絶対に幸子さんには知られないようにしてください。・・・そのような行動をとれば、幸子さんを・・・統一協会から救出することが非常に難しくなります」(2頁下から5行目~3頁1行)、「繰り返しますが、この手紙のこと、統一協会のこと等を、幸子さんに話すことは絶対にやめてください。ご両親において、・・・幸子さんを早期に救出していただきたいと思います」(3頁4行~6行)、と述べており、2回に亘って私に秘したまま私に対する脱会工作を進めるよう、唆しています。

元より、私の関知しないところで、私と全く関係のない第三者である渡辺弁護士が、私に対する脱会工作を進めるなど絶対に容認できないことですが、更に問題なのは、脱会工作の方法です。

渡辺弁護士は、本件手紙のことが私に知れれば、私を「救出」することが非常に難しくなると述べています。それはとりもなおさず、渡辺弁護士が進める「救出」と称する脱会工作が、私の意に反するものだからに他なりません。

人の意に反する脱会工作を一方的に施すことは、信教の自由に対する著しい侵害です。しかも、このような脱会工作が一瞬にして終わることはあり得ず、この脱会工作は、私が完全に信仰を失うまでの一定期間継続することが当然に予定されています。そのような期間、私の意に反する脱会工作を可能にする方法は、私に対する身体拘束(逮捕監禁)を伴うもの以外にはあり得ません。

ちなみに、平成18年(2006年)3月26日には、このような態様の脱会工作の違法性が争われた事件で最高裁の和解勧告に基づき、統一教会信者夫婦とその父母ら親族らとの間で、互いに相手方の信仰の自由や価値観を尊重し、これに干渉しないことを約束するとの和解が成立しています。

ところが、今回は親でも家族でもない渡辺弁護士自身が信者の脱会工作をけしかけているのですから、明らかに上記和解の趣旨に反しており、信仰の自由に対する干渉であると思います。本来、このような人権侵害を防止するのが弁護士の使命のはずですが、渡辺弁護士は本人の意思に反する脱会工作を教唆し、しかもその結果を自身の顧客作りに結びつけようとしているのですから、弁護士倫理を著しく逸脱していると言えます。

3.渡辺弁護士の行動の問題点

今回の渡辺弁護士の行動には以下の点で弁護士法、弁護士職務規程(以下、「規定」と言う)、ないし弁護士の業務広告に関する規程(以下、「広告規定」と言う)に対する違反があります。

① 私の両親の住所の調査

渡辺弁護士がどのようにして私の両親の住所・氏名を調査したのか全く思い当たる節はありません。仮に何らかの適法な方法で私の両親の住所・氏名を知り得たとしても、その知り得た情報を私に対する脱会工作のために活用することなど許されているはずがありません。

従って、このような個人情報の入手ないし活用は、弁護士に求められる「信義」「誠実」「公正」な職務遂行に違反し、信用維持義務、及び品位保持義務に違反しています(規定5条、6条)。

② 私の信仰についての情報提供

渡辺弁護士は、私が統一教会の信仰を持っていることを、私の承諾無しに私の両親に一方的に伝えています。しかし、自分の信仰について告白するか否かは本人の自由であり、第三者が勝手に暴き立てることは許されません。

しかも私の場合、反対派牧師等による拉致監禁などの被害に遭いたくないとの理由から自分の信仰のことを両親に話さずにいたのであり、信仰のことは私にとっては、自分から両親に伝えるまでは絶対に知られたくないプライヴァシーに関わる問題です。

このような業務上知り得た人のプライヴァシーを本人の承諾無く勝手に漏洩することは、秘密漏洩罪(刑法134条)の趣旨からしても許されるはずはなく、規定5条、6条に違反しています。

③ 私の両親に対する脱会工作の教唆

渡辺弁護士は、私には内緒で私に対する脱会工作を進めるよう、私の両親に教唆しています。しかし、人が一定の信仰を継続すると否とは、信者本人の自由であり、全くの第三者である渡辺弁護士が私に無断で私の脱会工作を進めるなど、それだけでも、憲法が保障する信教の自由の趣旨に違反します。

しかも上述の通り、渡辺弁護士が計画している脱会工作自体が、私に対する身体拘束を伴うものであり、極めて深刻な人権侵害であると言えます。従って、私に無断でこのような脱会工作を指導する渡辺弁護士の行為は、基本的人権の擁護義務に反し、弁護士法1条、及び規定1条、5条、6条に違反します。

④ 本件手紙の内容自体の問題点

本件手紙においては、以下の通り虚偽及び誤導にわたる情報提供がなされています。従って、本件手紙の送付は、弁護士の品位または信用を損なうおそれのある広告であって(甲2号証、甲3号証、甲5号証)、このような行為は規定9条1項、及び、弁護士の業務広告に関する規定3条1項、2項、及び6項に違反します。

イ 本件手紙には、一人で100億円以上もの全財産を奪われた高齢者が日本全国で数多くいると書かれていますが、そのような事実はありません。

ロ 本件手紙には、「現在、統一協会は、多数の日本女性信者を韓国に送り込み、韓国の辺鄙な農村に住んで結婚の機会に恵まれなかった高齢の男性や、身体障害者、知的障害者、末期の癌患者、失業している破産者などの結婚の可能性のない韓国人男性と結婚させています。

こうして韓国の辺鄙な農村等に送り込まれた日本人女性信者は、すでに6000人にのぼり、そのほとんどで婚姻生活が破綻し、韓国人男性の暴力を受けたりなどする中、悲惨な生活を送っています」との記載があります。

しかし、統一教会が女性信者を韓国に「送り込」んでいる事実はありません。希望者のみが韓国人との合同結婚式を受けていますし、渡韓して韓国で暮らすか、夫が日本に来て日本で暮らすかは、各家庭の自由な判断に委ねられています。

現在多数の日本女性信者が韓国の辺鄙な農村に住んでいるというのも事実に反します。現在、韓国人男性と結婚した日本の女性信者のカップルは6500人いますが、その半分以上はソウル、仁川、九里、テグ、釜山、大田などの都市で暮らしています。

農村で暮らす韓日カップルは半分以下です。

また現在、多数の日本女性信者を結婚の機会に恵まれなかった高齢の男性や、身体障害者、知的障害者、末期の癌患者、失業している破産者などの結婚の可能性のない韓国人男性と結婚させている事実はありません。

仮にいずれかの事例があったとしても、ごく例外的なケースです。「そのほとんどで婚姻生活が破綻し、韓国人男性の暴力を受けたりなどする中、悲惨な生活を送っています」との部分も事実に反します。

ハ 本件手紙には、「一生、自らの力で統一教会から脱出することが不可能」との記載があります。

しかし、統一教会に入信した信者は累計で52万人ですが、現在、比較的熱心に活動している信者は約6万人です。従って、強制説得によって脱会した約3000人(少なく見積もって)を除けば、自主脱会したか自らの意識で退会状態になっている元信者が圧倒的に多いと言えます。

ニ 渡辺弁護士は、本件手紙においてことさらに虚偽の情報を私の両親に提供し、「娘は韓国に送り込まれ、障害者と結婚し、塗炭の苦しみを味わわなければならない。この予想される未来を娘は自力で断ち切ることができない」と畏怖困惑させ、錯誤に陥れています。これは、殊更に同弁護士に相談するしかないものと両親を誤導しているものです。

⑤ ダイレクトメールの送付

渡辺弁護士は本件手紙の1頁目で「当職は、これまで19年にわたり、統一協会による霊感商法の被害救済に携わっており」と述べ、自分が統一教会を相手にする裁判を専門的に行ってきたことをアピールしており、ホームページ上における無料相談まで紹介しています。

従って、渡辺弁護士が私の両親に本件手紙を送った結果、もし私の両親が渡辺弁護士、または日本基督教団牧師に相談して私に対する脱会工作を行い、私を脱会させた場合、今度は、渡辺弁護士自身が私の両親、または私の代理人となって統一教会に対する損害賠償請求を行う結果となる可能性が客観的に極めて高いと言えます。

渡辺弁護士自身もそのような可能性を十分認識していたことは明らかです。従って、本件手紙の送付は、ダイレクトメールによる「広告」又は「宣伝」であると言えます。

ところで、上記「⑤」で述べた通り、本件手紙にはあからさまな虚偽事実が複数含まれており、これら虚偽事実によって殊更に私の両親を畏怖困惑させ、渡辺弁護士に相談する以外ないとの意思決定に誤導する記載があります。

もし本件手紙が純粋な親切心、ないし正義感から送付されたものだとしたら、虚偽事実を交えてまで、私の両親をことさらに畏怖、誤信させる必要はないはずです。

従って、本件手紙は、親切心や正義感から送付されたものではなく、むしろ、私の両親、または私を顧客として誘引することを「主たる目的」(広告規定2条)として送付されたものと言えます。

顧客の誘因が主目的でなければ、懲戒の危険を犯してまで、本件手紙のような違法行為を教唆するダイレクトメールを送付することは考えられないとも言えます。

しかも、このようなダイレクトメールを送付することについて所属弁護士会の承認(広告規定6条)を得たことを裏付ける記載は本件手紙の文面、及び封筒のどちらにも見受けられません。

従って、個人の信教の自由を無視し、違法行為を教唆する本件手紙の送付は、「品位を損なう広告又は宣伝」として規定9条2項に違反し、「不当な目的」のため、又は「品位を損なう方法」による事件の勧誘依頼又は事件の誘発として規定10条に違反しているのみならず、更に、広告規程3条6項、同6条、及び同10条にも違反していると言えます。

4.本件手紙以外の被害

ルポライターの米本氏の調査により、私以外にも5人の教会員の家族に、ほぼ本件手紙と同じ文面の手紙を渡辺弁護士が送付していることが短時日のうちに判明しました。渡辺弁護士がどのようにして信者の家族の氏名、住所を知ることができたのか極めて疑問ですが、5人のうち2人は脱会するに至っており、渡辺弁護士の教唆を受けた家族が実際に脱会工作を行った可能性があります。

また、2人の信者の家庭では、親子関係が破壊されたとのことです。短時日の調査でこれだけの被害が判明したことから、実際には渡辺弁護士が反復継続して本件手紙と同様の手紙を多くの信者家族に送付していることが強く推認されます。

5.付随的申立

第二東京弁護士会は広告規定第12条に基づき、本件違反行為の排除等をするよう求めます。

以 上

平成  年  月  日

懲戒請求者                   印

添付資料

甲1号証の1 本件手紙

甲1号証の2 封筒

甲2号証   田中幸子陳述書

甲3号証   米本和広報告書(or陳述書)

甲4号証   『月刊現代11月号』(講談社)

甲5号証   米本和広著『我らの不快な隣人 統一教会から「救出」されたある女性信者の悲劇』(情報センター出版局)

甲6号証   『新・これが素顔!』(日本基督教団)

甲7号証   最高裁和解調書(平成18年3月23日)

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