『月刊プレイボーイ』11月号に『我らの不快な隣人』の書評が取り上げられました。
『月刊プレイボーイ』11月号に『我らの不快な隣人』の書評が取り上げられました。
書き手は、徳川 家広さん。
『月間プレイボーイ』11月号より
拉致監禁し、拷問する親たちの愛は、いったいどれほどまともなのか。
徳川家広
徳川氏が感じ入った本文の一部分
~親による拉致監禁は信仰を剥奪するだけにとどまらず、信者が入信する以前から培ってきたもの、人格といえばいいのか、信仰の土台である人間としての根源的な部分まで根こそぎ剥奪する行為なんですよ。~
もう十年近く前に、新潟県で見知らぬ男の家に9年間監禁され続けてきた少女が発見され、警察に保護されるということがあった。なんともショッキングな事件で当然ながら大騒ぎとなっている。だが、今年の2月に、それも都内で、十二年五ヶ月も監禁されて衰弱しきった青年が発見されたことを、読者はご存知だろうか?
青年を監禁していたのは、かれのかぞくだった。家族は、青年にといつ教会に対する信仰を、放棄させようとして、荻窪のマンションに彼を封じ込め、彼が逃げ出さないように見張り、信仰を放棄させるための「説得」を続けるべく、共同生活をしていたのだ。統一教会といえば、霊感商法であり、合同結婚式ということになる。
右翼団体「勝共連合」のスポンサーでもある。そんな宗教に子供が入信したら、確かに親は心底困るだろう。
だが、子供の困った信仰心を捨てさせるのに、拉致監禁の上で、拷問としか思えないような「説得」を続けるという親たちの愛は、いったいどれだけまともなのか。それこそが、今回取り上げる「われらの不快な隣人」のテーマである。
著者はオーム真理教など、近年の駆ると関係で読ませるルポを何冊か書いてきた米本和広だ。本書も丹念で情熱のこもった取材ぶりで、文句なしの力作と言えよう。
子供が統一教会信者になったことに慌てた親は、脱洗脳のエキスパートを自称する人たち(主にプロテスタントの牧師)の指示に従い。その協力を得て、集団でわが子を襲って連れ去り、マンションの一室に閉じ込めてしまう。そして、子供をばとうし、恫喝し、時には暴力をふるって、何とか信仰を捨てさせようとする。
信者たちは家族の非道な扱いから受けて衝撃で、心を病むようになり、強烈なアトピー症状を出すものもいれば、自殺してしまう者もいる。
問題の根っこにあるのは、脱洗脳エキスパートたちが、依頼してきたかぞくや、彼らが救うべき若者の幸せよりも、自分や自分の教団の利害を第一に考えて行動しているとしか思えない点のようだ。
みんな、生臭く、しかも目的を履き違えているのである。それに、わがこの言うことに、ぜんぜん耳を貸さない親たち。結果として統一教会に入信してしまうほどに混乱している若者たちがひたすら苦しむことになる。
日本社会の実に嫌な、だがだれにでもおぼえのあるであろう一面が浮き彫りになった、貴重な一冊だ。
参考文献:『月刊プレイボーイ』2008年11月号
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