「拉致監禁をなくす会」設立趣旨文
「拉致」という言葉に接するとき、我々日本人は瞬時に「北朝鮮」を想起します。何の前触れもなく、突然襲われた上、日本海の海原を孤独と不安の中でなすすべなく絶叫しながら連れ去られた何の罪もない人に思いを馳せるとき、誰もが胸を締め付けられる思いに駆られ、いたたまれなくなります。
このように「拉致」という問題に特別な思いを抱くわが日本国内において、過去40年間にわたって実に4000件もの「拉致監禁」が実行され、今、この時も日本各地にて実行されているという信じがたい事実を知る人は世に多くありません。
周知のとおり世間から「カルト」と呼ばれている新興宗教がいくつかあります。それらを問題視して、その教団から信者を脱会させるため、信者の家族から脱会説得を請け負う「脱会カウンセラー」と言われる人たちがおります。彼らは信者の家族から脱会説得の依頼を受けるとある方法を指導します。その方法こそ、マンションやホテルの一室に信者を隔離する「拉致監禁」なのであります。
信者はある日突然、ある信者は自宅にて、ある信者は路上にて時には寝込みを襲われ、さらには教団施設を集団で襲撃され、拉致された上、車にて連行され、マンションやホテルの「監禁場」にて厳重に隔離されます。
そして外部の情報連絡などを一切遮断された上で、一方的な情報のみを与えられ棄教脱会を強要されるのです。信者はひとたび監禁されると泣こうが、わめこうが、騒ごうが、脱会を表明するまでは脱出できない状況に追い込まれます。
多くの場合玄関は内側から鎖をかけられ南京錠で施錠され、すべての窓には内側から脱出できないように念入りに細工されます。そのあまりの理不尽なやり方に対し、憤激しながら命がけの脱出を試み、ある者はマンションの上層階から飛び降り、またある者は液体洗剤を飲み干し、中には絶望のあまり自殺に追い込まれた者もいます。
このような「拉致監禁」による脱会説得は、いくら世間で「カルト」と呼ばれている教団の信者に対してであっても、問題であることは言うまでもありません。以下その問題点を列挙いたします。
第一に刑法第220条「逮捕監禁罪」に抵触する明らかな犯罪行為であります。
第二に憲法で保障された基本的人権、中でも自由権の重大な侵害であります。
第三に拉致監禁を体験した少なからぬ人びとが、脱会、非脱会を問わず、監禁から解放されたあと、不安感や、情緒不安定、不眠、悪夢、集中力や意欲の減退、うつ状態に苦しめられます。新たな対人関係をつくることも困難になります。なかには、拉致監禁時のことが突然フラッシュバックなどを特徴とする心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、社会復帰が困難になる人もいます。
第四に脱会カウンセラーの指導を受け、本人のためと思い、拉致監禁に踏切った家族はたとえ信者の脱会に成功したとしても、その後本来最も信頼すべき家族から暴力的に拉致監禁されたショックから家族関係がうまくいかず、心の溝が深まり、分裂状態に陥る家族が多くあります。
このような犯罪行為、人権蹂躙、心の破壊、家族破壊の蛮行が野放しにされているようでは、わが国日本はまともな自由と民主主義の国であるとはとても言うことができないと考えます。
ここにこのような蛮行を日本からなくすためには一人でも多くの人びとに社会に埋もれているこの事実を知っていただくことが早道であると考え、一教団の枠を超えて市民に訴えかける運動体を組織すべく「拉致監禁をなくす会」を設立することといたしました。この会を通じてこの事実を多くの方々に知っていただき、一日も早くこの日本から不当な「拉致監禁」が一掃されることを祈念します。
代表:小出 浩久
副代表:後藤 徹
最終更新日 2009年9月16日